のんきな顔をしてじゃれつくムゥマンキーをなでながらチャームは聞きます。
「何が駄目になったの?そのクロノアが居なくなってから‥‥」
「‥‥確かにね、クロノアがあの月の王国の事件を解決してくれてからみんな元どおりにはなったんだよ。でもね、クロノアが居なくなってからホントにいい風が吹かなくなっちゃって‥‥」
彼の言葉を証明するように彼の黒い毛並みの耳は風にそよぐこともなくただ垂れ下がったままです。チャームは何も言わずにじっと彼の話を聞いていました。
「空気が重たい、っていうのかなぁ。クロノアたちと遊んでたころはホントにいい風が吹いてたんだよ‥‥。」
「今だって吹いてるじゃない?」
よくわからない、といいたげな顔でチャームは言います。
「そんなことないよ。乗れるほどの風はあの頃からさっぱり吹いてくれないん‥‥わわ!」
言いおわらないうちからチャームはロップの腕を引っ張って無理矢理立たせてしまいました。
「そんなこと考える暇があったらまずやってみようよ!」
チャームはまたロップを引っ張りながら走り始めます。うれしそうに駆けながらかわいい声で叫びます。
「ほら、あのへんなんかよさそうよ!」
たたたたた‥‥
草原の村住人の特徴の、その力強い足でチャームは風だまりめがけて走りこみ、とーーん、と身軽にジャンプしました。
ふわっ‥‥
ジャンプしたいきおいのまま、チャームはふわりと空高く登っていきます。長くて愛らしいその両耳をまるで翼のように広げながら‥‥。
「あははは!ほら、ちゃんと風、あるじゃない!」
楽しそうに空をすべりながらチャームが下を見下ろすと‥‥地面につっぷしているロップが見えました。彼の頭の上にはなぐさめるようにエコゥテが乗っかっています‥‥。


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