そのとき、空の彼方が薄暗くなってきました。まさにその飛び魚の群れが王国へと向かって攻めてきていたのでした。
「……まさかこんなに大群とは……」さすがのパッシュも息を呑みます。
「これは、今まででも初めての大群でち!やつら、本気でちね?!」あわてふためく兵隊たち。
どんどんせまってくる彼らの飛んできた方角・はるか彼方に巨大な影が浮かんでいます。恐らくはヤーフよりも大きな、彼らのボスです……。
「なんか、とんでもない事にまきこまれちまったな。」軽く舌打ちしながらもパッシュはニヤリと笑います。
空から襲い掛かる飛び魚の群れを相手に、王国の兵士たちは勇敢に戦いました。もちろんパッシュとヤーフも協力しました。飛び魚たちにとって、パッシュたち空の戦力は計算外でしたし、ヤーフの咆哮は飛び魚をひるませるのに充分な力がありました。
飛び魚たちはまだまだ数は多くいたものの、このままでは危ないと感じたのか、後ろに控えていたボス魚のかん高い鳴き声を合図にいっせいに逃げ出しました。
「今がチャンスでち!一気にやっつけるでち!」
「おーーっ!!」
兵隊たちは巧みに掘られた移動用の用水路に飛びこみ、得意の泳ぎで追いかけ始めました。
「よし、俺達も行くぞヤーフ!」
主人を乗せてヤーフは飛び立ちました。背中に誰か小さな人影が張りついていることには気がつかないまま……。
← (5) →