すごいスピードで飛び去る飛び魚を追いかけるパッシュは、後ろに何か人の気配を感じて振り向きます。なんとそこにはプルゥがちゃっかりと張りついているではありませんか。
「おまえ、こんなとこで何してんだよ?!危ないから子供は家に……」
「僕は勇者になるんでちー!かっこわるい兵隊にはなりたくないんでちー!」
「‥‥‥‥おまえ。」
「僕、僕、走りまわるだけの兵隊なんかになりたくないでち……。お父さんは跡をつげって言うけど、僕はかっこいい勇者になるんでちーー!!」
「‥‥‥‥。」
パッシュは間近にせまったボスの巨大な飛び魚を見詰め、黙っていました。
もちろんこれは遊びでもなんでもありません。敵に襲われる以前に、本気で飛ぶヤーフに、そして戦いとなればなお激しく飛びまわるヤーフに乗っていることだけでもとんでもなく危険なことなのです。
パッシュが首筋をぱんと叩くとヤーフは一気にザコの群れを突き抜け、ボスにせまりました。


  「じゃあ、おまえの勇気を見せてみろ!絶対に手を離すなよ!」
大きな声で叫び、パッシュは腰の短剣を抜き放つと、躊躇せずに巨大な飛び魚めがけて跳躍しました。飛び魚の鎧のように固いウロコに、全体中を乗せた短剣を突き立て、パッシュはボスにつかまります。
痛さに、甲高い悲鳴をあげてびちびちと暴れるボス魚。振り落とされまいとボスのひれにひゅっとムチを絡め、それを頼りにパッシュはボスの頭めがけて大きく跳びました。

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