ボスを助けようとせまるザコを、ヤーフは体全体を使って追い払っています。プルゥもまた、振り落とされないようしがみつくのに必死です。まわりを見ているどころじゃありません。
もう、何がなんだかわからなくなっています。ひきちぎられそうに背中のたてがみにしがみつかれ、ヤーフもたまりません。
「パパパパパッシュ〜〜〜!!!」
叫ぶプルゥにパッシュがどん、とぶつかりました。ムチをちぎられほおりだされたパッシュを見事ヤーフが背中に乗せたのでした。
「舌噛むぞ。ほら見ろ、あとはトドメを刺すだけだ……ん?」
断末魔の声とは違う、さっきの合図のような大きな雄たけびを上げたボスはまた、高速で逃げ始めました。
そのボスのひと声で手下飛び魚たちはいっせいに王国に向けて飛び始めます。
「しまった!」
兵隊たちは水路を利用してこちらへと向かっています。このままでは飛び魚は兵隊たちとはすれ違って、守り手の居ない王国へと雪崩れこんでしまいます。
「とはいえこのままボスを放っておいたら回復したヤツにまた繰り返される!俺はヤツを仕留めるから、プルゥは急いで街に知らせてくれ!」
ヤーフを地上に下ろしながらパッシュは言います。そこには王国へと向かう川が流れていました。
でも、地面に降りたプルゥはうつむいてがくがく震えるばかりです。
「どうしたんだ?この川の流れを使えば先まわりできるだろ?!」
「……だめでち……。僕、僕、泳げないんでち……」
「なんだって?!まさか、そんなわけないだろ。ジャグポットの住人は絶対泳げるはずだぜ?」
そうです、彼らは水の中でも呼吸ができるどころか、むしろ水中での生活の方が向いているとすら言われているのです。
「泳げないったら泳げないんでちーー!」
がたがた体を震わせてプルゥは泣き出しました。
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